2015年4月9日木曜日

メダカが教えてくれた、残土埋め立てによる汚染問題

(ちば環境センターのニュースレターに寄稿された原稿を執筆者の許可をいただき転載しました。)


 田植えに備えて、メダカ田んぼに古代米の苗箱を運び、水の中に置いた。数日後、苗に元気がなく黄ばんできた。「苗箱の中で根詰まりを起こしているのか元気がないけど」などと話していた。マンノウを使い田んぼを耕起しているとザリガニも元気がなく、ドジョウも簡単に手で掴める。よく見るとメダカがいない。水に何らかの異変が起きていることに気づいた。

四街道メダカの会が多くの市民とムクロジ会に集まり、ムクロジ自然の里を作り、管理・保全をしてきてから10年を経過していた。子供たちや市民の遊びの場・憩いの場として親しまれ、様々な生物が回帰してきていた。GER(ギア、政府系国際NGO)からも表彰されるなど、どこにでもあった当たり前の自然を復元し市民に自然の楽しさを伝えてきた。環境庁のモニタリング1000里地の千葉県内の最大の調査地点にもなり、多くの関係者が調査に参加していた。
 異変が起きる前年(2012年)の秋から、ムクロジ自然の里がある谷津の上流で問題の建設残土埋め立ての特定事業が始まっていた。既に谷津の奥の方は別事業で埋められていたが、今回はムクロジの里からすぐ見えるところでの事業で20万㎥の残土を埋める。条例に沿って市の正式許可を受けており、環境上多くの問題を含んでいるがやめさせることは難しい。異変に気づいた私たちはパックテストによる水質の簡易検査を行い、余りにもひどい測定値に愕然とした。最大地点で水素イオン濃度(pH)が11.5、CODが40である事がわかった。メダカの全滅が、私たちに水の汚染を警告してくれたことになる。その後、四街道市とも連絡を取り、汚染原因の特定にあたった。
 現在、事業は埋め立ては終了したが、汚染は放置されたままである。汚染は近隣の井戸にまで及び、地下水脈にまで影響を与えている。流出水は、小名木川、鹿島川を通り、印旛沼に流入している。市はボーリング調査から、埋め立てられた残土のほぼ全部が市の基準(pH9まで)に適合していないと見ている。埋められた残土は、およそ幅100m長さ200m高さ10mである。分析した残土・汚染水の数値から単なる残土とは思えない数値を示している。
四街道市の条例では埋められた不適合な残土は、撤去することを原則としている。現在、市は業者に「改善計画」を出させているが量が多いだけに様々な困難が予想されている。私たちとしては条例に沿った将来に負の遺産を残さない解決を求めている。なお、この経過の中でムクロジ自然の里は閉鎖することになった。
 今後、東京オリンピックやリニア新幹線の工事に伴う建設残土の大幅な増加が予想されている。今でも、東京や神奈川から千葉県に大量の残土が持ち込まれている。残土埋め立てにより谷津が埋められ、生物多様性や水環境にこれまで以上の問題発生が予想される。また、残土に紛れて産廃の違法埋め立てなども考えられる。建設残土は産廃とは違って、その取り扱いに国の基準はないに等しい。建設残土について産廃に準じた扱いの法整備が早急に求められている。とりあえず搬出者責任を明確にすることである。
 君津市では、千葉県外からの残土の持ち込みを認めていない。千葉県、及び独自の市条例を持っている市町村でも県外からの持ち込みを認めない条例改正を早急に求めたい。安易に谷津を埋めることは、自然環境上問題が多い。  (任海正衛 NPO法人四街道メダカの会代表)

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